旅行・アクティビティ 他にはない神秘的な魅力がある。フィリピンの世界遺産リスト |
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世界中に美しい風景はたくさんありますが、フィリピンの世界遺産は絶景というだけではありません。その場所でしか見られない特別な個性があるのです。そこで、文化遺産と自然遺産がそれぞれ3つずつ存在するフィリピンの世界遺産の魅力についてまとめました。

マニラのサン・アグスチン教会の天井や壁に施されているのは彫刻に見えるトロンプ・ルイユ(だまし絵)

落ち着いた佇まいのサンタ・マリアのヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオン教会
1993年、フィリピン初の文化遺産として登録されたバロック様式教会群。マニラのサン・アグスチン教会、パオアイのサン・アグスチン教会、サンタ・マリアのヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオン教会、ミアガオのサント・トマス・デ・ビリャヌエバ教会の4つの総称です。どれもスペイン統治下にあった16世紀に建設されたため、ヨーロッパのバロック建築の影響を受けています。要塞としての機能を併せもった重厚な石造りで、地震や台風、戦禍を耐え抜いたことから「地震のバロック」と呼ばれることも。1571年に建設されたマニラのサン・アグスチン教会はフィリピン最古の教会といわれており、バロック風の美しい祭壇や壁画を見ることができます。

明かりが灯り始めた夕暮れに石畳の道を走るカレッサ(馬車)

街のシンボル的存在のセント・ポール大聖堂
16世紀、スペインの植民地となったビガンは、東南アジア貿易の拠点として発展した港町。第二次世界大戦中は奇跡的に戦禍を逃れ、現在に至るまで大航海時代の情緒を残しています。建物はヨーロッパの石造建築に加え、先住民のイロカノ人による木造家屋や中国商人によってもたらされた瓦などが取り入れられるなど様々な文化が融合。その建築様式は、独特の美しい景観を創り出しています。
ビガンの街の保護活動は世界遺産登録前から進められており、条例などによって無秩序な建物の改築の禁止、修復の際は当時の素材や技術などを使用することなどが定められていました。1999年、文化遺産に登録されてからは街の中心部への車の乗り入れが禁止となったり、建物がホテルや博物館として利用されるなど管理がさらに進んでいます。
市内にはセント・ポール大聖堂など数々の観光スポットがあり、見どころは豊富。ヨーロッパの古都を彷彿とさせるメインストリート・クリソロゴ通りをカレッサ(馬車)に乗って散策するのもおすすめです。

この地で暮らすイフガオ族が神への捧げ物として造ったといわれています

全ての棚田に湧き水を行き渡らせる技術は、世界中から高い評価を得ています
ルソン島北部の山岳地帯に広がるコルディリェーラの棚田群は、「天国への階段」とも呼ばれるほど神秘的な景観。約2000年にわたって山岳少数民族のイフガオ族によって受け継がれており、1995年文化遺産に登録されました。この棚田の総延長は地球の半周分の長さにあたる約2万キロメートルといわれ、その規模は世界最大。山に降った雨は様々な養分を含む水となり、岩や石を積み重ねて築かれた棚田の水路や岩の切れ目から隣や下の水田へと伝わっています。
しかし近年、上流域での森林伐採による鉄砲水の発生や農薬による水田の生態系の破壊、過疎化による後継者不足に伴い、広大な棚田の維持が困難になった時期もありました。棚田は水路としての役割もあるので、一部が崩壊すると全体の機能不全にもなってしまうのです。そういった様々な問題があることから、2001年に危機遺産へ登録されることに。その後、国内外の支援により伝統技法での棚田の保全が進められ、子供たちへの伝統教育が浸透したことから改善が見られたため、2012年には危機遺産登録が解除されました。

地下河川のある洞窟の入り口

自然が創り出した美しい鍾乳洞の内部
アメリカの旅行雑誌『Condé Nast Traveler』が主催するReaders Choice Awardsによって「世界で最も美しい島」に2014年、2015年と2年連続選ばれたパラワン島。そんな世界的に高い評価を得ている島に、1999年自然遺産に登録されたプエルト-プリンセサ地下河川国立公園があります。8.2キロメートルに及ぶ全長は、航行可能な地底河川の中で世界最長。このような地底河川は大量の雨が大地の石灰岩を浸食し、海水が流れ込んだことによって生まれています。そのため、海水と淡水が入り混じるので独特の生態系を有しており、稀少な動植物が生息する地でもあるのです。
洞窟内をボートで見学するツアーでは懐中電灯の明かりだけを頼りに進み、時にコウモリが飛び交うことも。約2000年前のジュゴンの先祖の化石も発見されている鍾乳洞には、大聖堂(カテドラル)と呼ばれる広大な空間やキャンドルと名付けられた高さ約10メートルの鍾乳石などがあり、壮観な光景を目にすることができます。
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海上でも様々な生物が生息
この自然公園はバロック様式教会群と同様の1993年、フィリピン初の自然遺産に登録されました。フィリピン南西部にあるパラワン島とネグロス島に挟まれたスールー海に広がっており、大小2つの岩礁と東南アジア最大といわれる珊瑚礁から形成されています。ウミガメやサメ、マンタなど500種類以上の魚類、350種類以上の珊瑚礁が生息しており、海洋生物の宝庫であるためダイビングスポットとしても人気。しかし豊かな漁場に接しているため、ダイナマイトを使った密漁が相次いで生態系の影響が深刻化しています。そこで、2009年には当初の遺産登録範囲から大幅に拡大され、トゥバタハ岩礁海中公園という名称から現在のものに変更されました。また、この地へ行くことができるのは季節風の影響により、3〜6月に限られています。

大自然が広がる雄大な景観

フィリピンの国鳥であるフィリピンワシもこの地に生息
2014年に自然遺産として登録されたハミギタン山地野生生物保護区は、ミンダナオ島の南東部にあります。約2万6千ヘクタールの広大な面積があり、海抜75〜1637メートルの標高差と高温多湿な気候によって様々な生物が生息。低地には熱帯雨林、中高地には地衣類、コケなどが繁茂するなど標高に応じて異なった生態系が育まれています。この地に生息する1380種の生物のうち341種はフィリピンの固有種で、フィリピンワシやフィリピンオウムなど絶滅危惧種も多く、ハミギタン山でしか確認されていない生物も8種存在。植物も同様に稀少な種がいくつも生育しており、ウツボカズラや絶滅危惧種のレッドラワンなどが見られ、その中でもランの固有種は世界屈指の数を誇るといわれています。
自然が生み出した美しい風景や歴史を物語る建築物など、フィリピンの世界遺産は心に響く神秘的なものばかり。そのほとんどはアクセスが容易ではない場所にありますが、それでも行く価値はあります。長い休暇を取ることができたら、これらの世界遺産を巡ってみませんか。

Written by CEBU21編集部 ライター
田村 朋子
フリーライターとして、主に女性誌のビューティー、ファッションページの記事を書かせていただいておりました。
その後ビューティー系キュレーションメディアのエディターを経て、現在CEBU21のライターとなりフィリピンで生活中です。